今日は とてもお天気がよくて ぽかぽかしていました
お花屋さんへ行って 花の苗や 球根を買いました
パンジー ビオラ チューリップ ・・・・・
葉牡丹といえば 今までは 和風 お正月 と連想させられたのに
今出ているものは 薔薇の花びらみたいに 可愛くて
思わず買ってしまいました
5つくらいまとめて植えると 花束みたいで 可愛いの
部屋に置く ミニ薔薇も買いました
薔薇って しっかり開いてしまうより 蕾が綺麗なんですね
少しずつ 開いていく蕾
少しずつ 大人になっていく 亀梨君
そんななぞらえ方を するって 何を見ても
彼のことばかり考えているようで ちょっと危ないですね
球根を植えていると
ふっと そこへKAZUYAがやって来る様な気がして
さらに 危ない自分に苦笑しました
世間知らずな彼なら チューリップの球根のこと
「玉葱の子どもみたい」
と 言いそうな気がしたり
「小学校以来だ・・・」
と 喜んで植えるのを手伝いそうな気がしたり
「これは ビオラ パンジーより ちっちゃいでしょ」
と ひとつひとつ花の名前を教えてあげたりと
かなりの妄想の世界に入りこんで
しあわせなときを 過ごしました (笑)
さて 見えない約束 とうとう最終話になってしまいました
途中 早く終わらせてすっきりしたい気持ちになったり
足踏みして 放置したい気持ちになったりしましたが
今は とてもさびしい気持ちです
もっと いろんなエピソードの中で 一緒に過ごせばよかった
なんて 悪あがきのようなこと考えてしまいます
「切ない」と 感想をいただくことが多かったので
最終話 みなさんの心が 温かくなってもらえれば
嬉しいです
それでは 読んでくださる方は お進みください
見えない約束 最終話
彼が 来なくなってから 2ヶ月が経った
私はあの写真を見ながら
何度も 同じ言葉を 繰り返した
「目に見えない 大切なもの」
毎日の生活は
彼と出会ったからといって
大きく変わるような そんな単純なものじゃない
今までと ちっとも変わってなんかいない
けれども
少しずつ 目には見えないところで
彼の言葉が 私を変えようとしている
「分かったわ 朝10時頃に 空港に着くのね」
「気をつけてね」
夫の帰国が 1週間後に決まっていた
そのとき
郵便物が届けられた気配を感じた
郵便受けの中に 白い封筒が届いていた
差出人は KAZUYA となっていた
招待状だった
六本木のレストランに 今日の夜 7時
彼が自分で書いたのか 少し癖のある字だった
ちょっとだけ お洒落してきて と書かれていた
彼に会いたい
今だけは 他のことは 考えたくない
自分の気持ちに 素直になりたい
黒のシンプルなドレスに真珠のネックレスとお揃いのピアス
シルバーのストールをラフに捲きつけて
シューズケースの奥にしまっていた高いヒールの靴を履いた
それは タクシーの運転手に行き先を告げると
すぐ分かるようなレストランだった
彼は もう来ていた
白のスーツに白い靴
中に着たシルクの黒いシャツ
白いネクタイを締めている
一見 ホスト風
でも 彼の透き通った瞳は 内面に秘めた純粋さを隠しきれなくて
どうにも アンバランスな魅力をたたえている
彼は 2ヶ月見ないうちに 少し大人っぽくなったように見えた
料理はどれも美味しかった
渋いワインは咽に心地良く沁みていく
けれども 私は 心が落ち着かない
彼に伝えなければいけない言葉があるのだけど
それが 何なのか分からなくて
「俺のこと どう思ってた?」
「女の子と派手に遊ぶちゃらちゃらしたヤツ?」
彼はいきなり尋ねてきた
肯きたいけど あからさまにそう伝えるのもためらわれる
「まぁ こんな世界にいるから そう思われても仕方ないよね」
「実際 全然遊んでないって言ったら 嘘になるし」
彼は にやっと笑った
「年上の人妻を誘惑する悪いヤツって?」
私の困った顔を見て にやにやして 覗きこんでくる
「うん 少しはそう思った」
今度は 正直にそう答えた
「まいったな」
「確かに 最初は1ミリくらい そんな気あったかもしれない」
「1ミリだけ?」
「10センチ? 30センチくらいかな?」
と 胸の前で 手を広げて見せている
「いやあ 結構あったかも」
「だって ちょっと危険な感じで よくね? 刺激的?」
「ちょっと いただいちゃおうかな なんてね」
「えっ」
あまりにも さらっと言ってのけるので 驚きさえ声にならない
「でもさ 彩花さんが作ってくれた料理食べたり
何でもないこと喋ったりするのが 楽しくなっちゃたんだね」
「なんかこのままに しておきたいって気持ちになった」
「このままの時間が続けばいいなって」
「それに 家族の写真 あれって 見ちゃうときついよね」
「壊しちゃいけないって気になるよ」
私のこと大切に思ってくれていたんだ
彼は私が思ってたより うんとしっかり考えていて 大人だったんだ
「そんなこと思ってたなんて 知らなかった 」
「けど 隙は狙ってたよ」
「だって 男の子だもん」
彼は 嬉しそうに笑った
「でも 彩花さん 手強かったんだよね 」
彼は参ったなという顔で言った
「俺 無理やりとか 絶対嫌だから」
彼は目を伏せ 睫毛が揺れる
「俺 彩花さんが泣いたあの日から
少しずつ本気で惹かれていたんだと思う」
「俺 大人になったら 人は悩んだりしないと思ってたんだ
自信をもって まっすぐまっすぐ生きてくって
でも あの日の彩花さん
悩んで迷って 自分がどうしたいのか 分からなくなってて
やっぱり 大人だって 悩んだり迷ったりするんだって分かった
いつもはしっかりしすぎるくらいなのに あの日
俺の前で 泣いてる彩花さんが すげえ可愛いかった」
「俺が守りたいって 思ったんだ」
私はあのときの自分を思い出して 急に恥ずかしくなった
あんな姿 見せたくなかった
あのときの私を 彼の記憶から消してしまいたかった
彼の前では 颯爽とした大人でいたかった
彼は いきなり立ち上がるとギターを取り出し
椅子に座って 弾き始めた
彼は 静かに歌いだした
♪ 君の涙
抱きしめたい
ただ 守りたい その笑顔
君が笑う それだけで
俺は 強く 優しくなれる
伝えられない この想い 海へ流そう
いつか木の葉の船にのって
君へ 届くように ♪
ギターの弦を爪弾く彼の指先は 私の心の表面を優しく撫でていく
彼の低くかすれた甘い声は 私の心の奥底にしずかに積もっていく
「これ 俺が作ったんだ」
「彩花さんに 一番先に 聴いて欲しいと思ってた」
来月 新曲として出すことになったその曲は
ソロとして彼が作詞作曲した初めての曲だということ
ギターは 2ヶ月間 特訓して弾けるようになったこと
ぽつりぽつりと話していく
「どうして ソロでギターを?」
「夢を思い出したから」
「俺 作詞作曲してソロで歌ってみたかったんだ 弾き語りで」
「でも 今更 もういいかなって思ってた
わざわざ一から勉強して 面倒なことやらなくても」
「だって 俺たち グループとして結構売れてるんだぜ」
彼は少し得意そうだ
「グループ全体としてのパフォーマンスがすごいんだ」
「でも それだけに 頼るんじゃなく
ひとりひとりが 成長していかなきゃね」
「俺にそう気付かせてくれたのは 彩花さんなんだよ」
「えっ 私が?」
「前にさ 俺 誰だって 夢を持てるって言ったよね」
「彩花さんに 逃げてるだけだって 偉そうに言ったよね」
「でも 本当は逃げているのは俺だった」
「ちょっといいとこまで来たからって 今の自分に満足して
冒険することも 勝負かけることも いつの間にか忘れてたんだ」
「でも 俺も 前へ進まなきゃと思ったんだ 」
「彩花さん見て」
彼の言葉の意味がわからなかった
「今の私は前になんて向かってないよ
それどころか いつも 後ろを振り返って迷ってばかりなの
それなのに どうして ?」
彼は静かに答えた
「振り返って 迷うことって それは 前へ進みたいからじゃねえの?
そこに 留まっていていいんだったら 悩まねえじゃん
夢を求めるからこそ 悩むんじゃねえのかな」
私は振り返ってばかりいる自分が嫌いだった
けれど そんな自分をこんなふうに見てくれる人がいるなんて
「彩花さんが俺に教えてくれたんだ」
そんなふうに言ってくれる人がいたなんて
こんな迷ってばかりの私が 彼の背中を押すことができた?
振り返っていいんだよ 迷っていいんだよ 彼は私にそう言ってくれた
それが 前へ進んでいることなんだよって
「嵐の夜は 彩花さん 凄くセクシィ~ だったしぃ」
彼は突然 話の方向を変えた
「俺 本気だったのに 振られちゃったぁ」
と 大袈裟に拗ねてみせる
「もっと 自分に自信持った方がいいよ」
彼は 私をまっすぐ見てそう言った
「雨に濡れてた彩花さん 綺麗だった 」
「ああぁ 俺 結構もてるんだけどなぁ」
と いつまでも わざと意地悪して言う彼のいたずらな笑顔が
もう見られなくなること 今だけは 忘れていよう
「今日 ここ 貸し切にしたんだよ」
「2人きりで 思いっきり楽しもうぜ」
タイミングよく甘い音楽が流れてくる
彼は私の手を取ると フロアーの中心へ導いていった
私は 彼の胸に頭をつけていた
踊り方なんて知らなくて ただ揺れているだけだった
心の奥が冴え渡っていくようだった
彼と2人で 透明な海の底に 静かに沈んでいくようだった
彼の顔がすぐ近くにあった
透き通る茶色の瞳
自分がいつ目を閉じたのか気付かなかった
彼の唇がゆっくりと 私の唇に重なるのを感じた
冷たくて 気持ちが静まっていく感じのキスだった
「約束」
彼が静かにそう言ったとき 私は ゆっくり目を開けた
彼の瞳は私をやさしくみつめていた
神様の前で誓いをするようなkiss
彼の声がした
「見えないものは すぐ そこにあるんだ
見ようとすれば 見えるんだ」
彼は私にたくさんのことを教えてくれた
私は彼に何かをあげることができたのだろうか
彼は私に柔らかく微笑みかける
彼の言葉が甦った
「彩花さんが そばにいる人を 笑顔にしてるんじゃないの」
2人は 店を出た
タクシーが停まった
ほんとうに さよならだった
ドアが閉まり 彼が手を振る
車が動き出した
少し走り出したところで いきなり車が止まった
息を切らした彼がそこにいた
私は窓を開ける
「これ 渡すの忘れたんだ」
そういうと 彼は 私の掌に何かを押し付けた
それは ネックレスの鎖の冷たい感触だった
彼は 私の耳に口を寄せると かすれた声でこう言った
「もしいつか あの夜みたいなチャンスがあったら
俺 絶対 今度は 我慢しないからね」
彼は TVで見た 口の端を少し曲げた誘うような顔で
派手にウィンクして 笑った
車は 再び走り出した
最後まで そんなふうに優しさを見せる彼に
私は 泣き笑いになってしまう
「ありがとう」
私は 小さな声でつぶやいた
私はリビングの掃除を終わって
彼からもらったネックレスを見ていた
水晶のような ガラスのような丸い石がついている
ガラスは透き通っていて かざすと窓ごしに空が見えた
空を映したガラスの中に彼の笑顔が見えたように思えた
透きとおったガラス
中には何も見えないけど 見ようとすれば いつでも彼の笑顔が見える
彼との約束が見える
「さあ 久しぶりに蟹クリームコロッケでも作ろうかな」
私は買い物へ出かけた
私は 今日もあの公園の前を通るだろう
Fin
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