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Author:彩花
ごくせん・野ブタではかっこつけてる嫌なヤツだったイメージが、こんなに変わってしまうなんて・・・・・
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今日は 父が朝から出張だった
どうやら 泊まりになるらしい


朝は ご機嫌で 
「お前 弁当なんて 自分で作ってるのか
 食欲も出てきたみたいで よかったな」
お土産 何がいい?」
これも 玲子さんが 父に喋ったからだろうね
ただ 仕方なく ちょっと手伝ってもらっただけなのに
 
福岡まで行くだけで お土産なんていわれても
小学生じゃないんだから
ほしいものなんて ないよね





夕食は コンビニのサラダとカップスープ
カップスープって案外 種類いろいろあるから飽きない
自分の部屋で 食べるのは 気楽でいいしね



「ちょっといいかな」
玲子さんが 部屋をノックした
「ちょっと 話したいの」
「今日は 二人きりだし いい機会だと思って」

「私は 話すことなんてないけど」
「そうよね でも 私は聞いてほしいことがあるの」

私が そっけなく答えても 
今日の玲子さんは 穏やかな顔ではあるけれど
どことなく 強い意志を見せていて
私は 覚悟を決めなくてはいけないと感じさせられた

「そう じゃ いいわ 何?」
彼女は まっすぐ私を見て こう言った
「お父さんのこと 分かってあげて
あなたのお母さんのこと 今でも愛してらっしゃるわ」


あまりにも いきなりで なんといっていいか分からない
ただ 玲子さんから 父と母の話なんて 聞きたくなかった


「辞めて あなたに 立ち入ってほしくないわ
そして いい加減なこと 言わないで
じゃあ なぜ あなたがここにいるの?」

「ママがいなくなって 2ヶ月でだよ
ママは 死ぬときまで パパだけを思っていたのに
あんまりだと 思わない?
それで まだ 愛しているって?
それを あなたが 私に言える?」


「そうね 柚樹ちゃんのいうとおりだわ」
彼女は静かに 目をつむった

「私が 正志さんの傍にいたいと思ったの
たとえ あなたのお母さんの代わりになれなくても
それでも 傍にいたい
私の我侭なの」

「でも お父さんのこと責めないでほしいの
お父さんの悲しみも 分かってあげてほしいの」


なんで この人にこんなこと 言われなきゃいけないんだろう
私が お父さんのこと分かってないって?

分かっているに決まってるじゃない
だって お父さんの悲しみは 私の悲しみだもの
同じ大切な人を失ったものどうし
一緒に 泣きたかったのに

でも 手を離したのは お父さんの方だよ
私は 心の中で叫んでいた


今まで 誰にもぶつけられなかった感情は 
私に中に飲み込まれ 押し込まれ 
行き場なく 消化することもできず
吐き出す出口も見つけられないままでいた


これ以上は 話したくなかった
せっかく 傷口を見ない訓練を続けてきたのに
なぜ また 私にそれを 
まざまざと見せつけるようなことをするの

今さら 分かり合わなくていいでしょ?
大人どうしだもの
知らん振りしながら なんとか 生きられるよ

一瞬 噴出しそうになった思いは
もとの場所に戻っただけだった

幾分落ち着いていた感情の渦は 
かき混ぜられ 乱されて
完全に元の状態に戻るまで 
また 幾日かの長い時間が必要なだけだった 



寒かった
温かい陽だまりが 恋しかった
温かい背中にもたれたかった

ひとりじゃないって 思いたかった
彼が見ていてくれるって 信じたかった





「今日は お弁当は?」 
お弁当なんて 作る気がしないでしょ
いったい 誰のせいなの?




ただ 逃げ出したくて 
学校へ行きたい
そうすれば 彼に会える
その気持ちだけが 私を支えていた


教室では 今朝も 
いくつかのまとまりで にぎやかなお喋りが始まっていた
その中で 一番大きな声で話す集団にみゆは入れられていた
自分の意思というより もう ただ大きな流れで
まだ みゆは来ていない

「ねぇねぇ 今日のは ほんとにビッグニュース!」
自慢そうにしているのは 
この間 彼の高校時代の噂を 話していた娘だ

「あのさぁ 竜先生 恋人いたんだって」
「えぇ うっそう~」
竜先生 お気に入りの美香子が 大げさな声をあげる

「マジ ショック」
「でも 竜先生なら 恋人くらいいるよね
 だから 私たちに冷たかったのか」

「で で それが 凄い美人らしいよ
同じ大学の人で 1つ先輩なんだって 」
話題を提供した子が 続けて話す
「バイクの後ろに乗せてたらしい
長い髪が風になびいて とっても綺麗だったって」

「なあんだ つまんない 彼女持ちか」
皆の興味は ここで途切れたようだ
可能性のないものは すぐ切り捨てる



私は 指先が冷たく感じた
まるで 心臓が血液を送るのを忘れたかのように
身体全体が 冷たくなり始めていた



彼の彼女?
バイクの後ろに乗せて?
そこは彼女の場所だった?


風になびく彼女の髪と
彼の金髪が絡んで流れる
彼の背中につかまる彼女の見えない横顔


「しっかり つかまってろよ」
あの甘い掠れた声
彼女は あの背中の温かさに包まれていく



バイクの行き先は あの海だね

二人が寄り添う海岸は
私が 彼の隣で海に浮かぶ小さな船を見たあの砂浜



彼は 私を見てくれていると思った
もう ひとりじゃないと 思ったのに

なぜ私をバイクに乗せたの?
俺は真面目だから 
「誰でも乗せるわけじゃない」って言ったじゃない?

放っておけなかったって言ったのは なぜ?
可愛そうな娘だと思っただけ?




その日の授業は 何だったかも覚えていない





お昼のチャイムが鳴った
でも 
私には もう 行く場所はなかった






<つづく>




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