「見えない約束 vol 6」です
昨日は ちょっとシリアスになってしまったでしょうか
今日は ロマンチックにいきたいのですが・・・・・
続きを読んでくださる方は お進みください
見えない約束
vol 6 date
彼とデート?
彼はひとこともそんなこと言ってない
私は混乱していた
「不規則な食事をしている男の子にご飯を食べさせてあげている」
今までは 彼と会うことに対して そう自分を納得させていた
でも 今日は 自分にどう言えばいいの?
彼と 家の外へ 出かける
年下の彼と?
アイドルの彼と?
彼と出かける理由が見つからない
自分を納得させる言い訳が見つからない
考えすぎて 考えることに疲れてしまった
「彼と一緒に出かけてみたい それだけでいいじゃない」
決心すると 私は娘の部屋に入って クローゼットを開けた
娘が置いていった服の中から一番地味に見えるワンピースを取り出し
身体に当ててみた
鏡に映った顔は どう見ても彼とは不釣合いだ
「何してるんだろう 私」
わたしは 苦笑した
自分の服の中から 落ち着いたベージュのアンサンブルを
着ることにした
それに黒のパンツを合わせた
夜になるのは 遅かった
でも いざ夜になってみると
昼などなかったかのように感じるくらい 早かった
彼は車で迎えに来た
彼の運転はとても上手で
私は 安心してシートにもたれかかってゆったりしていた
流れてくる音楽は 彼のグループの新曲のようだ
テンポのいい 乗りやすい曲
ビッグなアーティストが作ったらしい
彼は聞かれたことには答えるけれど
仕事のことについては 自分からほとんど話さない
続けて ラブソングが流れてきた
歌う彼の声は かすれながら甘く響く
私の心にできていたちいさな傷に沁みていく
傷の隙間を暖かく埋めていく
「俺 夜の遊園地 すげぇ好きなんだ」
パーキングに停めた車を離れるとき
彼はサングラスをかけ 帽子を深く被った
夜の遊園地は
子どもたちの元気な声に満ちている昼の遊園地とは
別の顔を見せていた
ここが現実の世界であることを忘れさせてくれる特別の場所
遊園地なんて 何年ぶりだろう
彼は私にも 帽子とサングラスを手渡し
「早く」と促す
えっ 2人でこんな格好してちゃ 余計に目立たない?
そう思いながらも 自分がドラマの主人公になったみたいで
すごく楽しい
入り口を抜けて 人目も気にせずに まっすぐまっすぐ走っていく
「遊園地っていえば 観覧車だろ」
彼はそう言って いきなり私の手を掴む
彼と繋いだ手
そこからドキドキが広がっていく
あまりドキドキが大きくなりすぎて
彼に聞こえてしまうんじゃないかと心配になる
夜の観覧車
恋人たちのデートの場所
でも 私には なにか居心地の悪い場所
私がこんなところに座っていていいのだろうか
ましてや彼と向かい合わせに座るなんて
私のそんな気持ちにはお構いなしに
彼は サングラスを取って 観覧車から見える景色を見つめている
「これ 俺からのプレゼント」
彼は嬉しそうに笑う
「この夜景だよ 綺麗だろう」
「彩花さんに 見せてあげたいなと思ってさ」
「昼の景色と全然違うんだ
同じ場所でもさ 時間によって 見え方って変わるよね
それって ちょっと すげぇ~って 思わねぇ
同じものでも 見る時間 や そのときの気持ち
誰と見るかによって ぜんぜん違うって 不思議じゃね?」
最後の 「誰と」って言ったとき
私を チラッと見たような気がするのは 気のせいだよね
彼って ほんとうに 不思議
子猫とじゃれたり 変な替え歌を歌ったり
好き嫌いを言って甘えたりしたかと思うと
ときどき すごく意味が深いひとことを言ったりする
今の彼は 夜景を見つめている
少しさびしそうな顔をして
無性に彼を抱きしめてあげたい気持ちになる
子猫と遊ぶ無邪気な彼
ときどき大人びた不思議な言葉を 口にする彼
彼は子どもと大人の間で 漂っている気がする
弱さと強さ
柔らかさと堅さ
穏やかさと激しさ
まるで正反対の二つの世界の間で揺れている彼
美しい けれども なにか儚げで壊れてしまいそう
私は 公園の前で会った あの日から
この危うさに惹かれていたのかもしれない
私は彼がいとしくてたまらない
彼を守ってあげたい
何ものからも 傷つかないように
彼を 男の子としてでもなく 男の人としてでもなく
彼自身として 見ていたい
私は 彼の目の中の夜景を 見つめていた
「kissしよっか」
いきなり彼が切り出した
彼の顔は笑っていない
私をまっすぐ見ている
彼の顔が迫ってくる
彼は私をじっと見つめたままで
どんどん近づいてくる
深い海の底のような瞳
どこまでも どこまでも深い
彼の瞳に吸い込まれていきそう
深い深い 底の底まで・・・・・
「なぁ~んてっ」
と 言うと 彼は飛び切りの笑顔になっている
私は 一瞬 自分を見失っていたことに気付き
どう取り繕えばいいかで 頭がいっぱいになる
面白そうにしている彼が恨めしい
「だって 観覧車っていえば kissでしょ」
「今からでも間に合うよ する?」
と まだまだ 面白がっている
自分が誘えば 絶対 断わる女はいないとでもいうような
自信満々な態度がにくらしい
「kissくらいなによ ・・・ 」
と 無理して言う自分の声が震えていないか不安なのも
動揺してる自分も 腹立たしい
彼は私の言葉など 無視して にやにやして 私を眺めている
どうして彼の前だと 女の子のような気持ちになってしまうの
彼はやさしい言葉を 口にすることはない
それどころか いつも からかってばかり
私の気持ちが落ち込んでいるときに わざと困らせるようなことを言う
でも それが 彼の優しさだと もうとっくに気がついている
彼が 私を励まそうと お気に入りの場所へつれてきてくれた
その優しさが 私をいっぱいに包んでいる
帰りの車の中は なぜか 2人とも無言だった
彼のCDの曲だけが 耳に聞こえていた
(つづく)
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キスするかと思ったら「な~んて!」で、私も肩の力が抜けました(笑)あの目で「キスしよっか」って言われたら誰だって動けなくなりますね(≧∇≦)ああ~でもドキッとした~。「今からでも間に合うよ する?」て自信満々で言ってそうな亀ちゃんが目に浮かびます。